東京大学大学院 システム創成学専攻 粟飯原周二研究室


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延性破壊(せん断破壊)は鋼中に存在する介在物や析出物を起点としてボイドが発生し,ボイドが成長,合体して起きるものである.従って,延性き裂伝播抵抗のき裂伝播速度依存性は,ボイドの発生,成長,及び,合体に対する歪速度の影響の観点から検討することが必要となる.

Fig.1は,強度が600MPa級の高張力鋼について,準静的試験と落重試験によりき裂伝播抵抗値を求めたものである.CTOA(Crack-Tip Opening Angle;き裂先端開口角)で表わしたき裂伝播抵抗はき裂伝播速度の上昇とともに低下することがわかる.これに対応して,破面上に現れるディンプルはき裂伝播速度が大きいほど(動的)細かく,且つ,浅くなっている(Fig.2,3).一方,別の高張力鋼においては,むしろ,き裂伝播速度上昇に伴ってき裂伝播抵抗(CTOA)は上昇した.これに対応して,ディンプルの分布には上記のようなき裂伝播速度依存性は現れなかった.この鋼は高純鋼でボイドの起点となり得る介在物が非常に少なかった.このような鋼では,ボイドが介在物を起点として発生することは稀で,ミクロ組織(この場合にはベイナイト)の界面でせん断歪によりボイドが発生するものと推定している.ボイドの初期形状は球状でなく直線的である.

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