東京大学大学院 システム創成学専攻 粟飯原周二研究室


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Fig.1はCO2の平衡状態図である.CO2輸送効率を確保するために,液相または超臨界状態で輸送されることになるが,パイプ内で気相を生成させないようにするために,臨界点以上の圧力で操業する必要がある.万が一,パイプに損傷が生じた場合,圧力低下によって気相が生成すると減圧が起きにくくなり,高速延性破壊防止の観点から極めて厳しい条件になることが予想される.CO2の状態は不純物ガス成分によって大きく変化するために(Fig.2),パイプラインの操業条件に大きな影響を与えるだけでなく,高速破壊防止のために必要とされるパイプ材料の靭性値も大きく影響を受ける.

Fig.3は天然ガスパイプラインの高速き裂伝播評価式(Battelle 2曲線法)を用いてき裂伝播を防止するために必要なパイプ材料の靭性値を試算した結果である.不純物ガス成分によっては天然ガスパイプラインよりも高い靭性が必要となることが予想される.Fig.4は当研究室で開発した高速き裂伝播シミュレーションモデルによって評価した例である.天然ガス(メタン)パイプラインでは減圧によりき裂は停止するのに対して,CO2パイプラインではき裂が発生しても減圧が遅くなるためにき裂は停止することなく伝播を継続することがわかる.高速延性破壊を防止するためにはクラックアレスターの適用も効果があるので,検討を行う必要がある.このような解析を行うことによりCO2パイプラインの強度・信頼性設計手法を確立することができる.

CCS用CO2パイプラインでは上記の高速き裂伝播防止に対する評価に加えて,不純物ガス中に含まれる可能性のある水分によるパイプ材料の腐食に対する評価などの技術評価課題に加えて,排出源と隔離場所を結ぶパイプラインルートの最適化とを含めた経済性評価も必要である.



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CO2輸送パイプラインの研究
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